この記事の要点(先に結論)
- 事業活動に伴って生じた廃棄物は、家庭ごみの集積所に出すことはできません。廃棄物処理法により、事業者が自らの責任で適正に処理する義務があります。
- オフィスの不用品は「産業廃棄物」と「事業系一般廃棄物」に分かれます。スチール机やロッカーは金属くず、樹脂製チェアは廃プラスチック類として産業廃棄物にあたるのが一般的です。
- 産業廃棄物の処理を委託するときは、収集運搬業者・処分業者それぞれと書面で契約(二者間契約)を結び、マニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付します。返送された写しは5年間の保存が必要です。
- 無許可業者に委託すると、委託した側も罰則の対象になり得ます。パソコンやHDDの処分では、個人情報保護法上の安全管理措置としてデータを復元不可能な方法で消去することも求められます。
オフィスの移転、レイアウト変更、拠点の統廃合。まとまった量の机や椅子、書庫、OA機器を手放す場面では、家庭のごみとはまったく違うルールが適用されます。
「知らなかった」では済まないのが、この分野の難しいところです。委託した先が無許可だった場合、委託した企業の側も責任を問われます。この記事では、法令と公的機関の情報をもとに、オフィスの不用品処分で押さえるべき基本を整理します。
オフィスから出る不用品は「事業系ごみ」?家庭ごみとの違いは?
廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)第3条第1項では、事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならないとされています。
つまり、たとえ従業員が数名の小さな事務所であっても、そこから出るごみは家庭ごみとは扱いが異なります。自治体の家庭ごみ集積所に事業ごみを出すことは認められておらず、市の条例違反として扱われる場合があります。
事業活動から出る廃棄物は、大きく次の2つに分かれます。
区分 | 内容 | 処理の考え方 |
|---|---|---|
産業廃棄物 | 事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、廃棄物処理法および施行令で定められた20種類のもの | 都道府県知事等の許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託 |
事業系一般廃棄物 | 事業活動から出る廃棄物のうち、産業廃棄物に該当しないもの | 市町村の定めるルールに従い、許可業者に委託または自ら搬入 |
産業廃棄物の20種類は、廃棄物処理法本体で定める燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類の6種類に、施行令で定める14種類を加えたものです。
オフィスの什器はどの区分になる?
品目ごとの一般的な考え方は次のとおりです。
品目 | 想定される区分 |
|---|---|
スチール机、スチール棚、キャビネット、ロッカー | 産業廃棄物(金属くず) |
樹脂製チェア、樹脂部品、梱包材 | 産業廃棄物(廃プラスチック類) |
ガラス天板のテーブル | 産業廃棄物(ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず) |
パソコン、複合機などのOA機器 | 金属くずと廃プラスチック類などの混合。メーカー回収ルートも利用可 |
木製の机・書棚、書類、段ボール | 業種によって産業廃棄物または事業系一般廃棄物。自治体に要確認 |
さいたま市は、事業ごみの案内において「廃プラスチック、金属製のロッカーやガラスのテーブル等は産業廃棄物に該当」する旨を示しています。
紙くずや木くずは、業種によって区分が変わる点が特に紛らわしいところです。判断に迷う場合は、事業所の所在地の自治体または都道府県の産業廃棄物担当課に確認するのが確実です。
処理を委託するとき、企業側が守ることは?
もっとも重要なのが、委託しても排出事業者の責任はなくならないという原則です。廃棄物処理法は、事業者に対し、最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるよう求めています。
具体的に踏むべき手順は次のとおりです。
手順 | 内容 |
|---|---|
1. 許可の確認 | 収集運搬業・処分業それぞれの許可証の写しを受け取り、許可番号・有効期限・取り扱える廃棄物の種類が委託内容と一致するか確認する |
2. 書面で契約 | 収集運搬業者と処分業者のそれぞれと個別に書面で契約を結ぶ(二者間契約)。収集運搬業者とだけ契約するのでは足りない |
3. マニフェストの交付 | 廃棄物の引き渡し時に産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付する |
4. 処理の確認 | 運搬・処分の終了報告として返送される写しを確認する |
5. 保存 | 返送を受けた管理票の写しを、送付を受けた日から5年間保存する |
6. 報告 | 事業場ごとに前年度の交付状況を、都道府県知事等へ報告する |
埼玉県も、産業廃棄物の取り扱いについて「収集運搬業者と処分業者のそれぞれについて、書面による契約(排出事業者と収集運搬業者、排出事業者と処分業者の2者契約)を取り交わして委託してください」と案内しています。
電子マニフェストは使わないといけない?
2020年(令和2年)4月1日から、前々年度の特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の発生量が年間50トン以上の事業場を設置している排出事業者は、その事業場から生じる特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の処理を委託する際、電子マニフェストの使用が義務づけられています。
裏を返せば、通常のオフィス什器の処分はこの義務化の対象ではありません。紙のマニフェストでも差し支えありませんが、交付や保存の手間を考えて電子マニフェストを任意で利用する企業も増えています。
無許可の業者に頼むとどうなる?
「格安で引き取ります」という営業を受けることがありますが、ここは慎重に判断すべき場面です。
無許可の者への委託(委託基準違反)は、廃棄物処理法上、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれらの併科の対象とされています。マニフェストの不交付や虚偽記載についても罰則が定められています。なお、刑法改正により2025年(令和7年)6月1日から「懲役」は「拘禁刑」に改められています。
重要なのは、罰則の対象は請け負った業者だけではないという点です。排出事業者責任の考え方のもと、委託した企業側の責任も問われます。安さだけで判断すると、結果的に企業のリスクになりかねません。
業者の許可はどこで確認できる?
- 許可証の写しを直接もらい、許可番号・有効期限・取扱品目を確認する
- 都道府県が公表している許可業者名簿と突き合わせる(埼玉県は産業廃棄物処分業者名簿・収集運搬業者名簿を公表しています)
- 「産廃情報ネット(さんぱいくん)」で許可情報を検索する
環境省は「排出事業者責任に基づく措置に係るチェックリスト」も公開しています。社内の手順書を整えるときの参考になります。
パソコンやOA機器はどう処分する?
パソコンは、資源有効利用促進法に基づき、メーカーによる回収・再資源化が義務づけられています。家庭用だけでなく、事業で使用したパソコンについてもメーカー各社が回収の仕組みを設けています。窓口はメーカーごとに異なるため、対象機種と申し込み方法を確認してください。
一般社団法人パソコン3R推進協会(PC3R)は、加入メーカーに代わって事業系パソコンの回収を受け付ける仕組みを運営しています。
データの消去はどこまで必要?
見落とされがちですが、情報の取り扱いこそ最大のリスクです。
個人情報保護法第23条は、個人情報取扱事業者に対し、取り扱う個人データの漏えい等の防止のため必要かつ適切な安全管理措置を講じることを求めています。個人情報保護委員会のガイドラインでは、廃棄の方法として次のような考え方が示されています。
対象 | 求められる手段の例 |
|---|---|
書類 | 焼却または溶解など、復元不可能な手段 |
機器・電子媒体 | 専用のデータ削除ソフトウェアの利用、または物理的な破壊など、復元不可能な手段 |
廃棄の記録 | 個人データを削除・廃棄したときは、その記録を保存する |
外部委託する場合 | 委託先に対する必要かつ適切な監督を行う |
ゴミ箱に入れてから空にする、初期化するといった操作では、データが復元できてしまう場合があります。処分を外部に委託する場合も「任せたから安心」ではなく、消去の方法と証明の有無を確認してください。
廃棄したときの会計処理は?
固定資産として計上している什器を処分した場合、帳簿価額を除却損として処理することになります。
物理的に廃棄していない場合についても、法人税基本通達7-7-2(有姿除却)は、その使用を廃止し今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産などについて、解撤・破砕・廃棄をしていない場合であっても、帳簿価額から処分見込価額を控除した金額を除却損として損金の額に算入することができるとしています。
実際の適用にあたっては要件の確認が必要ですので、顧問税理士にご相談ください。処分を証明する書類(引き取りの明細やマニフェストの写しなど)は、処理法上の保存義務とは別に、社内の記録として整理しておくと安心です。
捨てる前に「売る」という選択肢も
状態のよいオフィス家具、比較的新しいOA機器、会議用テーブルやチェアなどは、買い取りやリユースの対象になることがあります。処分費用がかかるはずのものが収入に変わる場合もあり、廃棄物の発生量を抑えることにもつながります。
なお、中古品を買い取って販売する事業を行うには、古物営業法に基づく公安委員会の古物商許可が必要です。買い取りを依頼する際は、この許可の有無もあわせて確認してください。
私たち株式会社Next Earth(埼玉県坂戸市)は、「Re-Earth/地球と共に、未来をつくる」という理念のもと、不用品回収・買取・リサイクル輸出を行っています。事務所やテナントの移転・閉鎖に伴う什器の整理では、まだ使えるものは買い取り・リユースへ、処分が必要なものは適正処理へと振り分け、まとめてご相談いただけます。現地でのお見積もりは無料です。数量が多い、退去日が決まっている、という段階でもお気軽にお声がけください。
産業廃棄物としての処理が必要な範囲については、許可を持つ処理業者との連携を含めてご案内します。委託先を選ぶ際は、当社を含めどの事業者であっても、許可の種類と契約・マニフェストの取り扱いを必ずご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 小さな事務所でも産業廃棄物のルールは適用されますか? A. 適用されます。廃棄物処理法は事業活動に伴って生じた廃棄物について、規模にかかわらず事業者が自らの責任で適正に処理することを求めています。従業員数や面積による例外はありません。
Q. オフィスの机や椅子を家庭ごみとして出してもよいですか? A. 出せません。事業活動から生じた廃棄物を家庭ごみの集積所に出すことは認められておらず、自治体の条例違反として扱われる場合があります。
Q. 収集運搬業者とだけ契約すれば足りますか? A. 足りません。産業廃棄物の処理を委託する場合は、収集運搬業者と処分業者のそれぞれと、書面で個別に契約(二者間契約)を結ぶ必要があります。
Q. マニフェストの写しはいつまで保管すればよいですか? A. 運搬または処分が終了した旨の管理票の写しは、送付を受けた日から5年間保存する必要があります。あわせて、事業場ごとに前年度の交付状況を都道府県知事等へ報告する義務もあります。
Q. パソコンのデータは初期化すれば大丈夫ですか? A. 十分とは言えません。個人情報保護委員会のガイドラインでは、機器・電子媒体の廃棄について、専用のデータ削除ソフトウェアの利用や物理的な破壊など、復元不可能な手段を採用することが示されています。委託する場合も消去方法を確認してください。
Q. 費用の相場はどれくらいですか? A. オフィスの不用品処分について、公的機関が公表している費用相場の統計は確認できません。什器の種類・量・搬出条件・買い取り可能な品の有無で金額が大きく変わるため、現地を見てもらったうえで内訳の入った見積書を取り、複数社で比較することをおすすめします。
まとめ
オフィスの不用品処分は、「家庭ごみとは別物である」という前提に立つことがすべての出発点です。押さえるべきは、区分の確認、許可の確認、二者間の書面契約、マニフェストの交付と5年保存、そしてデータの適正な消去の5点です。
無許可業者への委託は委託した側のリスクにもなります。一方で、まだ使える什器はリユースに回すことで、費用も廃棄物量も抑えられます。移転や統廃合のスケジュールが決まったら、早めに整理の計画を立てておくと選択肢が広がります。
出典・参考
- 環境省「排出事業者責任の徹底について」
- 環境省「排出事業者責任に基づく措置に係るチェックリスト」
- 環境省「産業廃棄物管理票・電子マニフェスト関連」
- 環境省「Q&A 電子マニフェスト使用の一部義務化等について」
- e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」
- 群馬県「廃棄物処理法における罰則一覧表(令和7年6月1日施行後)」
- 埼玉県「産業廃棄物の取扱いについて『排出事業者の処理責任』」
- 埼玉県「産業廃棄物処分業者名簿」
- さいたま市「産業廃棄物の種類」
- 経済産業省「パソコンのリサイクル(資源有効利用促進法)」
- 一般社団法人パソコン3R推進協会「事業系PCリサイクル」
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」
- 個人情報保護委員会「データの消去に関する注意喚起」
- 国税庁「法人税基本通達 第1款 除却損失等の損金算入」
- 警察庁「古物営業・質屋営業について」
- 産廃情報ネット(さんぱいくん)
- 株式会社Next Earth 公式サイト
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。廃棄物の区分や必要な手続きは、業種・自治体・個別の事情によって異なる場合があります。実際のご対応にあたっては、事業所所在地の自治体・都道府県の担当課、および税務については税理士など、それぞれの専門家にご確認ください。
